スガシカオ「夕立ち」

「私の耳は貝の殻。海の響きを懐かしむ」(ジャン・コクトー、堀内大学訳)

スガシカオの名曲「夕立ち」は、聴き手の聴覚を刺激することにおいても屈指の名作。

『ふいに 君がくちずさむ ぼくはきいてる ききおぼえのないメロディー』(『』内 は「夕立」より)
偶発的な自然の災難をきっかけに『君』との距離が立ち現れる。君との距離というよりは、君が持っている距離と自分の持っている距離とが。
そして、社会的な人為の障害の下、他人の悲劇とおのれの無力にさらされたとき、再び耳にする『ききおぼえのないメロディー』。そのときぼくに萌すのは、距離を持っているのは自分だけではないことのへの“了解”。くちずさんでいる側の声は『たよりなくて』『消えてしまうくらい』で、距離を、疎外をそれと認識しているのかさえも、彼の“了解”も通じるのかさえも定かでないけれども、いいのだ。『君がくちずさむ ぼくのしらない歌』に耳を傾けた瞬間があったということ、それだけで十分なのだ。
「夕立ち」はどこか遠くへ耳を澄ませる曲である。

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