「Happy Birthday」~「春と秋」

『うまく話ができなくて 本当はすまないと思ってる しばらく悩んでもみたけど そのうち疲れて眠ってる』と始まる「Happy Birthday」で、スガシカオは『それらしい 言葉をならべても 伝わることなど はじめからない』と歌う。

『口も、精神も、
心が耳にし、霊魂が推し量ったことを表現したことは決してなかった
それは人間が生まれもった胴枯れ病なのだ
マーガレット、おまえが悲しんでいるのは自分なのだ』
                    ホプキンズ「春と秋」(大野隆訳)より

木立が葉を落とすのを悲しむ少女に語りかける「春と秋」。眼差しは、木立を見やり、少女へ注がれる。対象との近さと内面へ向かうベクトルを感じる。
「Happy Birthday」は週末の街が舞台。自分自身も風景と化す。どこか高いところから眺めているような視線と遠いフォーカス、そして空に広がっていく意識。
曲が始まる前、風の鳴るような音が聞こえる。風、つまり動く空気、対をなす二つの作品に共通する遠景としてのモチーフだ。止まっていては「胴枯れ病」と対峙できない。

名前はどうでもいい、悲しみの源は同じだと宿命を語り、『ひとつずつ こわれてゆく世界で 流した涙に なんの意味がある』と虚無を歌うけれど、絶望と諦観の向こうに再び生きることがあることを私たちは再確認するのだ。
「伝わることなどない」といいながら伝えようとする、「表現したことはなかった」と表現しながら表現することをやめない彼らの情熱こそ、「胴枯れ病」と対峙し得る。

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