「スズメバチの巣」でフリスクのドクター?を見る

数あるフリスクのCMの中でもドクター編はマイベスト。ドクターの表情は何度見ても笑えちゃう。
先日、D・スーシェの「名探偵ポワロ」の「スズメバチの巣」を見ていてぎょっとした。ハリスンを演ずる俳優、ドクターに似ている!!

「スズメバチの巣」は、余韻が残るというよりも、のどに塊が詰まった感じを残す独特の感触の一編。

ポワロは殺人を未然に防ぎ、死者は出ない。でも、思わせぶりな髑髏のステッキ飾りに、放っておけば人の死にもつながるから死んでもらわなければ困る“明日なき”スズメバチの羽音の禍々しさ、そして逃れられない病魔と、死は濃厚に漂う。それは、登場人物それぞれの愛情と全編通したセピアトーンが醸し出す情感でも打ち消せない。

物語としての“しこり”に加えてどうにもつっかかってしまうのが、三角関係を演じる俳優、そして声優の取り合わせ。

若き日のピーター・キャパルディはめちゃめちゃ瑞々しく美しい。それに対してヒロインのモリー、自己主張過多のアーチ型の眉は、当時はありだったのかもしれないがガタガタラインで、それってあり?!と叫ばずにはいられないし、老けていてきれいなんだかどうかよくわからない。声は高島雅羅と申し分ないんだが。P・キャパルディと並ぶと保護者みたいだ。彼はTVシリーズ「第一容疑者」のゲイ役がすばらしく印象的。加えて吹き替えが三ツ矢雄二なもんで、モリーのような女性に情熱的になることに違和感を感じて仕方がない。
そしてハリスン。あと2カ月の…というにふさわしい俳優を選んだのかもしれないが、トップモデルのヒロインと婚約しているという設定には貧相でツラい。吹き替えが超二枚目声の津嘉山正種とくるから、なおさらツラい。
不調和と違和感の3人。字幕版では雰囲気はどう変わるだろうか。

でも、ハリスン役がCMのドクターかもと思うと、ただただ貧相の印象しかない俳優がああいうお茶目で傑作な表情ができるかということで、思わず救われてしまう。本当に同一人物かどうかは謎だけど。

と、作品に直接関係ないところではこのたび救いを見出せたものの、物語は“しこり”が残る。
殺人は防がれたが、直接・間接の死者が出なかっただけ。犯罪は実行されたのだから。
後悔とポワロへの感謝を示す犯人と残された時間ともにあるのは、卑怯な犯罪を犯したことへの自責と犯罪が成り立たなかったことへの安堵、そして、絶望の果ての命を賭した企てすら成就し得なかった空虚か。

「スズメバチの巣」は物語として追ってはいけない、つらすぎるから。ポワロの視線の細やかさと推理の鮮やかさにひたすら心奪われてこそ、セピア色が美しい。

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