無断乗車を禁ず

駐車場で車の中にいたら、隣の敷地の駐車場に入ってきた車のライトに照らされたのがわかった。
ルームライトをつけていたので私の姿は見えたはず。ハンドルに向かって約45度、中途半端に突っ伏して固まっている姿を見て、何と思っただろう。
 ①具合が悪くなったのがおさまるまでじっとしている
 ②つきあっていた相手と別れて泣いている
 ③金縛りに襲われて身動きとれないでいる

正解は「カマドウマ(みたいな虫)を追い出そうと探していたら足がつって痛くて動けないでいる」だ。

残業の長さとカーオーディオの音量は比例する。自分としてはMAXのボリュームでCDかけて走らせていた車に無断乗車していたのは、長~い触覚をさわさわさせた中くらいのカマドウマ(のような虫)。窓から下車してもらうべく試みたけどだめ。しょうがないので、「お願いだからこっちに来ないでよ」と祈りつつ駐車場まで同乗させてあげることにした。いざ到着したら行方不明なんだもの。途中、約束違反ものの異常接近してきたくせに。ということで探していたら、足がつってしまった。

ルームライトつけてハンドルの前で顔を伏せて動かないでいる姿を見たら、だれだって薄気味悪いに違いない。足がつって動くに動けないでいるとはまず思いつかないだろう。まして虫を追い出そうとしてだなんて。自分だったら上記の三つぐらいがとっさに考え得るその人の事情、理由だ。

でも、近来にない忙しさで身体のあんばい悪さはさすがに自覚せざるを得ないし、『不在の恋人』には当分会えそうもない、そして身動きとれなかったのは紛れもない事実。ということで、いずれも当たらずとも遠からず。大正解ではないが、まるっきり外しているわけじゃない。
他人の内実は、そうそうたどり着けるものではないけれど、全く近づけないものでもない。人の間で生きていく上で、それを推し量ろうとすること、それにコンタクトしようとすることは、放棄したり諦めたりする必要の全くない、試みるに値するトライアルだ。

結局見つからなかったので、あしたどんな形で再会するんだろう、何だかやだなーと思いながら外に出たら、あらら、リアのウインドウでもそもそしていた。足つらせてまで探したのは一体何だったの……って、徒労と思えるうちが花ってのはよくあること。かつ、徒労で済んだ幸福は実は意外に大きい。
そんなこんな考えさせたカマドウマ(と思える虫)だけど、無断乗車は今後一切許しませんっ。

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