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zoom RSS 泡坂妻夫著「家紋の話」「卍の魔力、巴の呪力」

<<   作成日時 : 2008/10/25 20:47   >>

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ともに新潮選書の「家紋の話−上絵師が語る紋章の美」「卍の魔力、巴の呪力−家紋おもしろ語り」は、泡坂妻夫の職人としての意気と先人への敬愛が心地いい2冊。著者の小説にも通じる『機微と計算に裏打ちされた奇想天外・大胆不敵の世界』はかなり楽しい。

読んでいる最中、ラジオで「紀伊国屋文左衛門」という浪曲の演目を耳にした。はたと思い当たったのが紀文のトレードマーク。TVCMでとてもいいなと思っていたマークがソール・バスの作と知り仰天したのは2年前。対称形を成し、円と中心を意識させる、シンプルで洗練、かつ温もりのデザイン、あれはまさしく家紋だ。私には名作中の名作に思えて仕方がないというか、やたらに好きなのだが、そのわけの一端に出会ったようでいたく腑に落ちる。
サイズがいまいち小さいけれども、紀文のマークはこちらでどうぞ

著者は、漢字が重なるとき、「次次」「人人」のように「々」を用いない。手持ちの短編には使われていたのだが。
円形とともに対称形は家紋の二大根幹の一つ。「卍の…」の「対称形」という章でさまざまな対称を紹介している中に、「二つ雁金のように直線に並ぶ形をひとこまずらすという対称もあり、これを並進対称性といいます」とあった。どういうことだかさっぱりわからないが、図版を見る限り“並ぶ”というイメージでいいのかなと勝手に理解。そうすると、「々」を使用しないことに合点がいく。著者はここで並進対称性を現出させていたのだ!(「並進対称性」を検索してみたらいーっぱい出てきた。回転(著者は「廻転」と表記)とも鏡像とも違う対称性……らしい)

2冊でフォントが違うためか、「卍の…」においてのみの現象なのだけれども、「巴」の字がどうも左にずれているような気がする。巴がテーマの章は当然字が頻出するから、そのつもりで目を凝らすと、縦書きのラインがよろめいて見えてくらくら。
そうやって、“何だか目くらまし食らったみたい”などと巴の章をしげしげ見ていて初めて気がついた。それぞれ卍と巴がテーマの章のタイトル、「卍の魅力」「巴の魔力」なのだった。本の題名とずらしてある!普通に読んでいればわかることじゃないかと言われればそのとおり。でも、字面そっくりだし、まさか題名と違えてあるなんて。全然気がつかなかった。著者のだましに見事引っ掛かった、とこじつけるのも楽しい。

画像    画像
兎のモチーフはどれも可愛い。中には上のようなこんなのあり?!というものも。左が「尻合せ三つ兎」、右が「後ろ向き三つ兎」。今気がついたんだが、後者は紀文のマークとつながる。

画像右は「波と月と兎」。大海と地上と天空だ。限られた平面への凝縮・収れんと無限の宇宙への広がりを併せ持つ意匠。内と外、双方向のベクトルを感じさせる点がこれまた紀文のマークに共通する。人間の感性と技量に壮大な自然、ミクロコスモスとマクロコスモスの、可愛らしくも奥深い紋だと思う。

冒頭に書いた気概と敬意には、「さすが神田の生まれ」では済まされ得ない洒脱と反骨も含まれている。それらに加え、著者独特の浮遊感漂う優しさ、そして家紋の世界の素晴らしさは、私をこの世のくびきからいっとき解き放ってくれるようだ。降りていた荒御魂(あらみたま)がいつしか和御魂(にぎみたま)と入れ替わっている、そんな2冊の威力の源は、著者の意力と家紋の偉力なのだろう。

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