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zoom RSS 文春文庫「マイ・ベスト・ミステリー」W・X

<<   作成日時 : 2008/09/07 19:58   >>

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ミステリーの第一人者たちが「最も好きな自分の作品」と「最も好きな他人の作品」を選び、それらにまつわるエッセイも書いている、非常に興味深い日本推理作家協会編のアンソロジー。
WとXで計3人が木々高太郎の作品を選んでいる。そのうち1作は感激の初読作品。加えてうれしいのは、エッセイで彼についての言葉が読めたことだ。

X収録の北村薫のエッセイによると、江戸川乱歩は『彼の作品に、スリルにまで高められた「情熱」と「自尊心」とを感じる』(以下、『』内はタイトルの文庫より引用)と言ったそうだ。
北村薫は自作の「ものがたり」と木々の「永遠の女囚」を並べている。特別の感慨は持っていなかった「永遠…」だが、『人間関係の構図が全く同じ』作品と並ぶと木々のヒロインの持つ“切迫”がより際立って切ない。それは情熱と自尊心によるものだ。ここで情熱は愛に置きかえられる。彼女の愛は極限の域の切迫という負の情動と不可分なのに、それでも愛を捨てず、自ら生み続ける切迫と彼女なりの方法で対峙する姿は壮絶でさえある。

ついでながら、「ものがたり」のヒロインは多部未華子で決まりだ。

Wには木々作品が2作。
夏樹静子が「文学少女」を選んでいる。
『作品を読まれた方には、これ以上私が…書く必要はないであろう。』、エッセイはこう終わっている。その結びは「文学少女」にふさわしい。言葉にできない大きな感情に包まれ、その中に立ち尽くしながら自分を包んでいるものの大きさ、深さになお打たれるしかない「文学少女」のラストは本当に素晴らしい。

ところで、夏樹静子自作の「足の裏」、私はすっかり梶山季之だと思っていた。題名を見たときから変な感じにとらわれたが、読むにつれどんどん記憶の中の“梶山作品”と符合していくスリルといったら。再現不可能の極上のミステリ体験まで味わってしまった。

初読作品「ヴェニスの計算狂」を選んだのは松本清張。
過去のものを特別再録したエッセイには、木々の作品の『着想の妙、プロットのロマン性、文章の香気と直裁に魅せられていた』とある。「青色鞏膜」、『敬慕を感じる』作品の一つに挙げられているが、まさにそれだ。
先日、「青色鞏膜」で木々のジレンマに思いを馳せた私としては、『夢があまりに大きすぎ、…構想が必ずしも十分に発酵しないままのものがある』と後に続く、『その作品のようにロマンティック』で、『それでいてひそかに自己の観照にきびしかったのではないか』という清張の木々像がいたく沁みる。
立ち読みで手にした「マイ・ベスト・ミステリー」、木々の“新作”と人となりに出会わせてくれた偶然にただただ感謝である。

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