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zoom RSS 新潮文庫「星への旅」

<<   作成日時 : 2006/08/08 21:03   >>

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吉村 昭死去。きょうも新聞に追悼記事が載る。
多分、久世光彦によるシリーズもののウイスキーの広告でだったと思う、そこでの引用に惹きつけられ、書店を探しまくって手にすることができた新潮文庫「星への旅」。今絶版になってはいないだろうか、大丈夫だろうか。引用されていたのは「少女架刑」。それが書かれた年代も、表題作が太宰治賞を受賞していることも、そして著者についても何にも知らずに読み始める。

その後、彼の読者にならなかったのは、少女の骨というモチーフの文庫の解説をかりるところの「詩的残酷美」に興味を抱いて読んでみたら、何よりもかによりも真っ先に受け取ることになったのが無意識に期待していたのと180度逆向きのベクトルのものだったからだと思う。
これも解説にある「鉱物的な現実感覚」とか淡々として静謐な筆致はそれこそ希望どおりというものだった。だが、そういう語り口で語られるのは何とも底深い情念、人間くささなのだ。ある種離人的・超越的境地にお目にかかれるのかと思っていたら、実は描かれていたのはまさに“死んでも消えない”主観、意識、情熱だ。

「透明標本」に流れる陰鬱な息苦しいまでの情念。「星への旅」のレクリエーションかのごとく集団自殺に臨む若者の自意識。不協和の音の重なりが恍惚を感じさせるフーガのように人の内面がそれぞれに立ち上る「鉄橋」は、アンカーたる主人公の“内部の真実”に打ちのめされる。
彼により示される人間の情念の深さとの対峙に耐え得なかった自分は、いまだ次の著作を手にできずにいるが、昭和30・40年代にこのような作品をものしていたのかと唖然としてしまう作者の素晴らしさに圧倒される一冊だ。絶版になっていないことを祈ります。

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