ぐれた

アクセスカウンタ

zoom RSS 表紙は本の顔です

<<   作成日時 : 2005/02/16 00:25   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

雑誌の売り上げが誰を表紙に起用したかで左右されるというのはよく聞く話だし、単行本の装丁も同様とか。人間と同じ、第一印象というのは重要だ。
例のブームにのって角川文庫で横溝正史を読み始めた者にとって、あの杉本一文氏の表紙は横溝ワールドを思い起こすに欠かせないものだろう。恐怖とエロティシズムに満ち満ちた氏の作品は活字の世界にさらにイマジネーションをもたらしてくれた。私が読み始めた時期は幼かったんだと思う。エッチだとはもちろん感じていたが、それよりも「この人、絵、上手だよなー」という感慨の方が先にあった。インタビューによると小松崎茂の模写をしていたとか。さもありなん。あの、写実的でもあり、すばらしく幻想的であるという(この点、ひょっとしてミュシャと共通するかしら)両立しがたいであろう要素を見事に融合させている作品は、同時に、いたって下世話なというか、此岸的で即物的な要望(欲求の方がいいか?)と、この世のものならぬ彼岸的な雰囲気も同居させている。また、生と死にまたがる喜悦と恐怖を見せてくれてもいる。ブームが一段落してからだもんな、それまでぜ〜んぜん平気だったのに、レジにこの文庫を差し出すことにためらいを感じ始めたのは。「芙蓉屋敷の秘密」とか「誘蛾灯」のころ“何だよ、このごろ前よりヤラしくなってんじゃない?”と思ったものだが、それはこっちが変化していたわけだ、なるほど。同じ横溝の本でも複数のバージョンがあるようだが、とりあえずマイベスト3をあげてみよう……と思ったが、できない、無理だ。「本陣殺人事件」「悪魔が来りて笛を吹く」は傑作。「刺青された男」「恐ろしき四月馬鹿」「びっくり箱殺人事件」あたり怖いぞ。あと、ちょっと毛色の違う「ペルシャ猫を抱く女」もいいと思う。

その昔々のブルック・シールズのジーンズメーカー(だっけ)のCMじゃないが、夢野久作と私の間には何も存在しないというのが私の“自負”。社会教養文庫だったか、分厚い文庫本に出会ったのはまさに疾風怒濤のど真ん中だった。その厚さと、おどけでなくおどろおどろしい表紙に即お買い上げとなった「ドグラ・マグラ」。幸か不幸かというか、寡聞にして不勉強ながらそれまで全く夢野久作の存在は知らなかった。何の媒介もなく彼と出遭ったことは、彼の世界と自分は“直接”つながっているとの極めて独善的・恣意的・運命的解釈をさせてもらっている。そして確実に言えるのは、あの表紙でなかったら読もうとは思わなかったということもあり得たということ。どうにも引っかからずにはいられなかった表紙であったことを改めて感慨深く思う。夢野久作を知らない読書人生なんて……私にとっては実に味気ないこと。疾風怒濤の荒れ狂う精神状態になぜかしみいるその世界。筆をとるにいたるまでの経緯から思うに、自分を思うままに解き放てる、自己をそのまま表現することが可能な世界を求める彼のいじましくも狂おしい思いが、荒れ果てた心にどこか共感をもって響いたのだろう。

「パン屋再襲撃」に対する新聞紙上の“大絶賛”の書評は、私をもってしてそれまでの村上(春)氏への食わず嫌いを改めてみようかなという気にさせたものだ。書店に買いに行き平台でその本を見つけたとき、お目当てであるはずのそれよりも数倍私を惹き付けたのは、その題名とはかけ離れた、毒々しささえ感じさせる熱帯雨林の細密描写風の表紙だった。竹田青嗣の「陽水の快楽」だ。2冊とも購入。結果は、「パン屋再襲撃」、途中で挫折。どうしてもついていけなかった。ついていこうという気持ちにもなれなかった。「陽水の快楽」、何度読み返したかわからないなんてもんじゃない。一時期は、首っ引き、“座右の名著”状態。ツボにきたんだわな。あの表紙はかけ離れてはいなかったんだ。妖しさプンプンの陽水の楽園を象徴していたわけだ、あぁ。

表紙からは離れるが、安易な上下巻の分割もいかがなものかと思う。明らかにコスト増(販売する側はベネフィット増なんだろう)だし、読み手とすればそのボリュームに惹かれるというのもあること。講談社文庫の「虚無への供物」、かつて私が興味をそそられたのは、タイトルはもちろん第一要因だが、次にはその分厚さだ。上中下までになるような大作は無理としても、しかし必要のない分割がだんだん増えていっているような気がする。
書物の形態、表紙、装丁というのは、内容との相乗効果云々の以前に読ませるか否かにまでかかわってしまっている。人の外見に惑わされないようにするのと同様に、外装に左右されることなくよい中身の本を探り当てろというのは厳しい話だ。それは読書においての一つの立派なフェティッシュな要素となっているのだから。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
表紙は本の顔です ぐれた/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる